2014年にアメリカで始まったアイスバケツチャレンジは、ALSの研究を支援するために氷水の入ったバケツを頭からかぶるか、アメリカALS協会に寄付をするという運動で、SNSで全世界に広まって社会現象となりました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)
ALSは指定難病です。
症状
難病情報センターのHPによると、ALSについて以下のように書かれています。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。
しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。
その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。
その一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。
ALSは筋肉がやせ衰えていく恐ろしい難病ですが、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれるという点は押さえておいてください。
症状は、筋力低下による四肢の運動障害から始まり、舌などの筋萎縮による嚥下障害や構音障害、呼吸筋の萎縮による呼吸障害などが生じてきます。
発症状況
日本における発症率は年間10万人に1~2.5人程度で、女性より男性のほうが1.2~1.3倍多いです。好発年齢は60~70代となっています。
支援ツール
透明文字盤
透明文字盤は、透明な板に文字や記号を書き、視線や指差しで意思疎通を図るためのコミュニケーションツールです。特に、ALSなどで話すことが困難な方が視線や指差しで文字を指し示し、介護者などがそれを読み取ることで意思疎通を図ります。
過去問
第32回 問題93
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 免疫疾患である。
2 振戦や筋固縮が主な症状である。
3 視力や聴力は保たれる。
4 運動失調が現れる。
5 全身の臓器に炎症を起こす。
1 免疫疾患である。
自己免疫疾患は、自身の免疫が自己の組織に反応して炎症や組織の損傷を起こします。
関節リウマチやクローン病、全身性エリテマトーデスなどがこれにあたります。
2 振戦や筋固縮が主な症状である。
これは、パーキンソン病の特徴です。
3 視力や聴力は保たれる。
これが正解です。
4 運動失調が現れる。
運動失調症とは、起立・歩行時のふらつきや呂律が回らないなどの症状を起こすもので、ALSの症状とは異なります。
5 全身の臓器に炎症を起こす。
これは、自己免疫疾患の全身性エリテマトーデスの症状です。
第34回 問題90
- 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)では出現しにくい症状として、適切なものを1つ選びなさい。
1 四肢の運動障害
2 構音障害
3 嚥下障害
4 感覚障害
5 呼吸障害
選択肢4の感覚障害はALSには見られません。
第34回 総合問題3
次の事例を読んで、答えなさい。
〔事 例〕
Eさん(35歳、男性)は、1年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断された。当初の症状としては、ろれつが回らず、食べ物の飲み込みが悪くなり、体重の減少がみられた。
その後、Eさんの症状は進行し、同居している両親から介護を受けて生活をしていたが、両親の介護負担が大きくなったため、障害福祉サービスを利用することになった。障害支援区分の認定を受けたところ、障害支援区分3になった。Eさんは訪問介護員(ホームヘルパー)から食事や入浴の介護を受けて自宅で生活をしている。
問題120
Eさんが病院を受診するきっかけになった症状に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 対麻痺
2 単麻痺
3 球麻痺
4 安静時振戦
5 間欠性跛行
事例のEさんは、選択肢3の球麻痺だと推測されます。「ろれつが回らず、食べ物の飲み込みが悪くなり」とあるので、構音障害や嚥下障害が見られます。
問題121
- ある日、Eさんの自宅を訪問した訪問介護員(ホームヘルパー)は、Eさんの両親から、「これまでEは話をするのが難しく、筆談で意思を聞いてきたが、ペンを持つのが難しくなってきた」と聞いた。確かにEさんは、発話や字を書くことは困難な様子だが、目はよく動いている。
次のうち、今後、Eさんが家族とコミュニケーションをとるときに使うことのできる道具として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホワイトボード
2 絵や写真
3 透明文字盤
4 拡声器
5 補聴器
選択肢3が正解です。
問題122
- 3年後、Eさんの症状はさらに進行し、障害支援区分6になった。Eさんはこれまでどおり、自宅での生活を希望し、Eさんの両親は障害福祉サービスを利用しながら最期まで自宅でEさんの介護を行うことを希望している。
Eさんと両親の希望の実現に向けて、現在の状態からEさんが利用するサービスとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 育成医療
2 就労定着支援
3 共同生活援助(グループホーム)
4 行動援護- 5 重度訪問介護
選択肢5が正解です。重度訪問介護は、Eさんのような重度の肢体不自由者等に対して居宅における介護や移動中の介護を提供するサービスです。重度訪問介護は区分4以上が対象なので区分6のEさんは受けることができます。
第36回 問題54
- Cさん(55歳、男性)は、5年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断された。現在は症状が進行して、日常生活動作に介護が必要で、自宅では電動車いすと特殊寝台を使用している。
次の記述のうち、Cさんの現在の状態として、最も適切なものを1つ選びなさい。- 1 誤嚥せずに食事することが可能である。
- 2 明瞭に話すことができる。
3 身体の痛みがわかる。- 4 自力で痰を排出できる。
- 5 箸を上手に使える。
選択肢3が正解です。ALSでは体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれるという点は押さえておいてください。
次の記事
次は、脊髄小脳変性症について。
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