嚥下機能の低下
高齢になると嚥下機能(飲み込む力)が低下します。
嚥下機能が低下する原因としては、「喉頭挙上の不足」が挙げられます。
喉頭挙上とは、嚥下をする時にのどぼとけが一旦挙上する動きのことで、挙上してから下がることで食物を咽頭に送り込みます。これが不足すると食べ物が咽頭にスムーズに送られなくなって嚥下機能が低下します。
高齢になると以下の能力や機能が低下し、誤嚥しやすくなります。
嚥下反射の低下
嚥下反射とは、食べ物を、のどから食道まで一気に運ぶ運動を起こす反射のことです。
咽頭反射の低下
咽頭反射とは、気管に異物が入らないよう喉の奥に指を詰め込むとオエっとなることです。
咳嗽反射の低下
咳嗽反射とは、異物が気管に入った時にむせ込むことです。
「がいそうはんしゃ」と読みます。
ということで誤嚥しやすくなり、誤嚥性肺炎などを引き起こします。
高齢者が喉に食べ物を詰めやすくなるのは、これだけの理由があるのです。
記憶力の低下
記憶の種類によって加齢による影響を受けやすいものがあります。
加齢により低下する記憶
エピソード記憶、作動記憶(ワーキングメモリ)
加齢により低下しにくい記憶
意味記憶、手続き記憶
4つの記憶の種類がわからなければ以下の記事で覚えておきましょう。
感覚機能の低下
聴覚:高周波音が聞こえにくくなる
高齢者はモスキート音が聞こえないとかいいますね。
味覚:味を感じにくくなる
加齢によって味蕾(みらい)が減少しそれによって味を感じにくくなります。
高齢になると濃い味を好むようになるのはこれが原因です。
味蕾というのは味を感じる器官のことですね。
過去問
第33回 問題72
加齢による味覚の変化に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 味蕾の数に年齢による違いはない。
2 服用する薬剤で味覚が変化することはない。
3 唾液が増加して味覚が敏感になる。
4 濃い味を好むようになる。
5 口腔ケアは関係ない。
選択肢4が正解です。
第32回 問題71
加齢に伴う嚥下機能の低下の原因に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 舌骨の位置の上昇
2 咽頭の位置の上昇
3 舌骨上筋の増大
4 喉頭挙上の不足
5 咳嗽反射の増強
1 舌骨の位置の上昇
加齢に伴い舌骨の位置が下がり嚥下機能に支障をきたすことがあります。
2 咽頭の位置の上昇
加齢に伴い咽頭の位置が下がることで嚥下機能が低下することはありますが
3 舌骨上筋の増大
加齢に伴い筋肉が落ちてきます。舌骨上筋も加齢により筋力低下し嚥下障害に繋がります。
4 喉頭挙上の不足
これが正解です。
5 咳嗽反射の増強
咳嗽反射は加齢に伴い弱くなります。
第32回 問題72
老年期の記憶と注意機能に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自分の若い頃の記憶では、40歳代の頃の出来事をよく覚えている。
2 数字の逆唱課題で答えられる数字の個数は、加齢による影響を受けない。
3 複数のことを同時に行う能力は、加齢によって低下する。
4 騒がしい場所での作業効率は、若年者より高齢者が高い。
5 エピソード記憶は、加齢による影響を受けない。
1 自分の若い頃の記憶では、40歳代の頃の出来事をよく覚えている。
40代はどこからでてきたのかよくわかりませんが、間違いです。
2 数字の逆唱課題で答えられる数字の個数は、加齢による影響を受けない。
このような作業記憶(ワーキングメモリ)は加齢による影響を受けます。
3 複数のことを同時に行う能力は、加齢によって低下する。
これが正解です。
4 騒がしい場所での作業効率は、若年者より高齢者が高い。
そんなわけありません。
5 エピソード記憶は、加齢による影響を受けない。
エピソード記憶は加齢により低下します。
第31回 問題71
加齢に伴う身体機能の変化として、適切なものを1つ選びなさい。
1 周辺視野が広くなる。
2 低周波の音から聞こえにくくなる。
3 味覚の感受性が低下する。
4 振動に敏感になる。
5 嗅覚が敏感になる。
1 周辺視野が広くなる。
加齢により視野が広くなることはありません。
2 低周波の音から聞こえにくくなる。
低周波ではなく高周波の音から聞こえにくくなります。
3 味覚の感受性が低下する。
これが正解です。
4 振動に敏感になる。
加齢によって振動に敏感になることはありません。
5 嗅覚が敏感になる。
加齢によって感覚器官は鈍感になります。
次の記事
次は、認知症について。
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