組織を運営するに当たっては、様々なリスクが存在します。組織の管理者として知っておかなければならないリスクと、そのマネジメント方法について学びましょう。
リスクマネジメント3つのモデル
ハインリッヒの法則
事故発生モデルの代表格といえば、ハインリッヒの法則です。
ハインリッヒの法則とは、1件の重大事故の裏には、29件の小さな事故、300件のヒヤリハットがあるという労働災害の経験則です。
ということでハインリッヒの法則は、別名「1:29:300の法則」とも呼ばれます。
アメリカの損保会社で労働災害を調査していたハインリッヒ(Heinrich, H.)が発表しました。
確率的には、300件のヒヤリハットが積み重なれば、その中から1件の重大事故が発生することになります。
1件の重大事故は、その1件だけではなく、背後には無数のヒヤリハットが隠れているということです。重大事故につながりかねない軽微な事故やヒヤリハットを、「インシデント」といいます。
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だからヒヤリハットの段階で、重大事故の芽を潰していかないといけないね。

スイスチーズ・モデル
スイスチーズは、大小さまざまな穴が開いているのが特徴です。

スライスしたスイスチーズは、穴がたくさん開いていて脆弱です。
スライスしたスイスチーズを2枚重ねると、穴はいくつか隠れます。

何枚も重ねていくと、どんどん穴は隠れていきます。
これがリスクへの対応の基本です。
つまり、1種類の安全対策では脆弱なので、何重にも対策をすることで、リスクを限りなくゼロにできるという考え方です。
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リスク管理の基本は、異なる種類の安全対策を多重的に構築するということだね。
ですが、このスイスチーズモデルでは、このような多重の安全対策があってもたまたま穴が重なってしまったときに重大な事故が起こります。これがスイスチーズモデルの戒めです。
スノーボール・モデル
スノーボールモデルは、医療現場で生じる事故のモデルです。
医療現場では、1つのエラーが別のエラーを誘発し、そのエラーがさらに別のエラーにつながって患者のところまで到達し、雪だるま式に事故が増大することがあります。
例えば、ある医師が患者を間違えて別の患者にすべきでない治療をし、看護師もよく確認せずに間違った治療をし、さらに別の医師も間違った薬を処方し、薬剤師もよく確認せず薬を渡し、・・・というように、どんどん事故が雪だるま式に増大するモデルです。
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雪だるまが大きくなる前に、潰しておこうね。
過去問
第33回 問題26
ハインリッヒ(Heinrich, H.)の法則に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 機能障害、能力障害、社会的不利という障害をとらえるための分類である。
2 人間の自己実現に向けた欲求を5つの階層で示したものである。
3 一つの重大事故の背景には、多くの軽微な事故とヒヤリハットが存在する。
4 患者が余命を知らされてから死を受容するまでの心理的プロセスである。
5 生活課題を抱えた人の支援をする上で必要な7つの原則である。
1 機能障害、能力障害、社会的不利という障害をとらえるための分類である。
これはICIDHの内容です。
2 人間の自己実現に向けた欲求を5つの階層で示したものである。
これはマズローの欲求階層説の内容です。
3 一つの重大事故の背景には、多くの軽微な事故とヒヤリハットが存在する。
これが正解です。
4 患者が余命を知らされてから死を受容するまでの心理的プロセスである。
これはキューブラー・ロスが唱えた「死の受容過程」のことでしょう。
5 生活課題を抱えた人の支援をする上で必要な7つの原則である。
これはバイステック7原則のことでしょうか?
公認心理師 第2回 問29
ある人物の起こした1件の大きな事故の背後には、同一人物による軽度、重度の同様の事故が 29 件発生しており、さらにその背後には、事故にはならなかったが危ない状況が 300 件あることを示した事故発生モデルは何か、正しいものを1つ選べ。
① インシデント
② 危険予知モデル
③ スイスチーズモデル
④ スノーボールモデル
⑤ ハインリッヒの法則
選択肢⑤が正解です。
次の記事
次は、組織における人材育成について。
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