人間は同じ姿勢で長時間いるだけで、血液やリンパの流れが悪くなり体のパフォーマンスが低下します。長時間運転するだけで如実に感じられるでしょう。寝たきりの人に対してこのような状態への対応がいかに重要か想像できると思います。
廃用症候群とは
廃用症候群とは、病気や怪我で長期間安静状態が続くことで身体機能が低下する状態で、褥瘡もその一種です。また、筋肉が衰える筋萎縮や関節の動きが悪くなる関節拘縮などの身体症状もあれば、うつ状態やせん妄のような症状も起こり得ます。
褥瘡とは
褥瘡とは「床ずれ」とも呼ばれ、寝たきりなどで圧迫されている箇所の血流が悪くなり、皮膚が赤くなったりただれたりすることです。
褥瘡の発生部位
褥瘡の発生しやすい部位は、
2位:尾骨部
3位:踵骨部
4位:大転子部
5位:坐骨結節部
6位:腸骨部

図を見ればわかるように、お尻周辺での褥瘡が多いですね。
長時間続きやすい姿勢は、寝ている状態ですから当然です。
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尾骨はお尻の先の骨、仙骨はその上部にある骨で、仰向けに寝たときに床に当たるのは尾骨ではなく仙骨だよ。だから仙骨がダントツ1位なの。
仰向けに寝る仰臥位は長時間続きますから、褥瘡は仙骨部が圧倒的に多く、全体の半分程を占めています。
横向けに寝る側臥位では大転子部や腸骨部がピンポイントで圧迫されるので、褥瘡が発生しやすくなっています。
座位では座骨結節部の褥瘡が発生しやすいです。
褥瘡予防法
以下の3点が主な褥瘡予防法です。
・体圧分散寝具などを用いる
・体重を減らす
過去問
第35回 問題22
- 廃用症候群(disuse syndrome)で起こる可能性があるものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 うつ状態
2 高血圧
3 関節炎
4 徘徊
5 下痢
1 うつ状態
これが正解です。
2 高血圧
誤りです。廃用症候群で起こる可能性があるのは、起立性低血圧です。
3 関節炎
誤りです。廃用症候群で起こる可能性があるのは、関節拘縮です。
4 徘徊
誤りです。
5 下痢
誤りです。廃用症候群で起こる可能性があるのは、便秘です。
第35回 問題23
- 褥瘡の好発部位として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1 側頭部
- 2 頸部
- 3 腹部
- 4 仙骨部
- 5 足趾部
選択肢4が正解です。
第32回 問題74
Bさん(82歳、男性)は脳卒中(stroke)による右片麻痺がある。
ほとんどベッド上の生活で、排泄もおむつを使用している。
一週間前から咳と鼻汁があり、37.2℃の微熱で、元気がなく、いつもよりも動きが少なかった。
食欲も低下して食事を残すようになっていた。
今日、おむつの交換をしたときに仙骨部の皮膚が赤くなり一部に水疱ができていた。
Bさんの皮膚の状態とその対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 圧迫によって血流が悪くなったためである。
2 仙骨部にこうしたことが起こるのは、まれである。
3 食事量の低下とは無関係である。
4 体位変換は、できるだけ避ける。
5 おむつの交換は、できるだけ控える。
選択肢1が正解です。
右片麻痺で「いつもより動きが少なかった」とあるので、圧迫されて血流が悪くなったことによる症状です。
第33回 問題90
Dさん(31歳、男性)は、脊髄損傷による対麻痺で、リハビリテーションのため入院中である。
車いすでの日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)は自立したが、退院後自宅で生活するときに、褥瘡が生じないか心配している。
Dさんの褥瘡が発生しやすい部位として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 頭部
2 上腕部
3 背部
4 腹部
5 坐骨結節部
選択肢5が正解です。
対麻痺とは、四肢麻痺と異なり両下肢のみの運動麻痺のことです。
座骨結節部とは、座骨の下端にある、座ったときに座面に接する部分で対麻痺では褥瘡が発生しやすい部位です。
次の記事
次は、麻痺について。
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