介護福祉士国家試験では様々な難病が出題されます。パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなど、これら具体的な難病についてはあとで取り上げますので、ここでは難病と指定難病の違いを理解しましょう。
難病
難病は、以下の4つの条件を満たしている疾患です。
・治療方法が確立していない
・希少な疾患
・長期の療養を必要とする
このうち、さらに以下の2つの条件を満たす難病を指定難病と呼び、医療費助成の対象となります。
・客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立している

つまり、障害者総合支援法では、より広範囲の難病の方を対象にしてるんだね。

指定難病
指定難病は300以上ありますが、いくつか知っておきましょう。
パーキンソン病
パーキンソン病は中脳の黒質にあるドーパミン神経細胞が減少することにより生じる神経変形疾患です。パーキンソン病の四大症状(振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害)を押さえてください。日本における発症率は、10万人あたり100~150人で、好発年齢は50~65歳となっています。
パーキンソン病の四大症状 | 内容 |
---|---|
振戦(ふるえ) | 何もしていない時にふるえる「安静時振戦」 |
筋固縮 | 筋肉の緊張が強く、関節が固くなり、手足の動きがぎこちなくなる |
寡動、無動 | 動作の開始に時間がかかり、動作そのものも遅くなる 目のまばたきが減り、顔の表情が硬くなる |
姿勢反射障害(姿勢保持障害) | 体を後方に押されると足が出ず、バランスを保持できなくなり、転びやすくなる |
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パーキンソン病では手の震えだけじゃなく足や顎もふるえることがあったり、安静時だけじゃなく動作時にも見られることがあるよ。
パーキンソン病の進行速度を示す指標に「ホーエン・ヤール重症度分類」があります。
ホーエン・ヤール重症度分類 | 内容 |
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ステージⅠ | 体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる |
ステージⅡ | 両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみられる |
ステージⅢ | 小刻みに歩く、すくみ足がみられる 方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが介助なしに生活できる |
ステージⅣ | 立ち上がる、歩くなどが難しくなる 生活のさまざまな場面で介助が必要に |
ステージⅤ | 車いす生活や寝たきりになる |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、運動をつかさどる神経(運動ニューロン)が主に障害されて、筋肉が衰えていく進行性の疾患です。手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気ですが、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。
症状は、筋力低下による四肢の運動障害から始まり、舌などの筋萎縮による嚥下障害や構音障害、呼吸筋の萎縮による呼吸障害などが生じてきます。
日本における発症率は年間10万人に1~2.5人程度で、女性より男性のほうが1.2~1.3倍多いです。好発年齢は60~70代となっています。
支援ツール
透明文字盤は、透明な板に文字や記号を書き、視線や指差しで意思疎通を図るためのコミュニケーションツールです。特に、ALSなどで話すことが困難な方が視線や指差しで文字を指し示し、介護者などがそれを読み取ることで意思疎通を図ります。
2014年にアメリカで始まったアイスバケツチャレンジは、ALSの研究を支援するために氷水の入ったバケツを頭からかぶるか、アメリカALS協会に寄付をするという運動で、SNSで全世界に広まって社会現象となりました。
脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症は、起立や歩行がふらつく、手がうまく使えない、喋る時に口や舌がもつれるなどの運動失調症状をきたす変性による病気の総称です。3分の1が遺伝性です。
運動失調とは、歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等、動かすことは出来るのに、上手に動かすことが出来ないという症状です。
運動失調症状が見られる疾患には、ガンや脳梗塞、多発性硬化症や栄養障害などがありますが、これらのどれにも該当しない場合に、変性症と呼んでいた経過があり、病気によっては病気の場所が脊髄にも広がることがあるので、脊髄小脳変性症と呼んでいます。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは、骨格筋の壊死や再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称で、ジストロフィン異常症(デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー)、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィーなど様々な病型があります。
筋ジストロフィーは、筋肉の機能に不可欠なタンパク質の設計図となる遺伝子に変異が生じたためにおきる遺伝子疾患です。
主病変としては以下の2点です。
・筋線維の壊死
これにより筋力が低下し様々な障害を引き起こします。
クローン病
大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患といい、クローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。クローン病は主として若年者にみられ、口腔から肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こりえますが、小腸を中心に消化管に炎症や潰瘍が生じるため、栄養の吸収が阻害され栄養障害になりやすいです。
過去問
第37回 問題51
- 次のうち、クローン病(Crohn disease)にみられる特徴的な症状として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 視力低下
2 栄養障害
3 咳嗽{がいそう}
4 運動失調
5 関節痛
選択肢2の栄養障害が正解です。クローン病では小腸を中心に消化管に炎症や潰瘍が生じるため、栄養の吸収が阻害され栄養障害になりやすいです。
社会福祉士 第37回 問題4
難病に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 発病の機構が明らかでない疾患であることは、「指定難病」の要件の一つである。
2 「指定難病」では、客観的な診断基準が定まっている。
3 「指定難病」の患者数は我が国において人口の1%程度に達する。
4 「障害者総合支援法」の対象疾患は、「指定難病」より対象範囲が狭い。
5 小児の難病については、法律に基づく難病対策はない。
1 発病の機構が明らかでない疾患であることは、「指定難病」の要件の一つである。
正しいです。
2 「指定難病」では、客観的な診断基準が定まっている。
正しいです。
3 「指定難病」の患者数は我が国において人口の1%程度に達する。
誤りです。人口の0.1%程度です。
4 「障害者総合支援法」の対象疾患は、「指定難病」より対象範囲が狭い。
誤りです。障害者総合支援法の対象疾患の方が対象範囲が広いです。
5 小児の難病については、法律に基づく難病対策はない。
誤りです。小児慢性特定疾病対策があります。
次の記事
次は、指定難病の1つ「パーキンソン病」です。
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