公益社団法人日本介護福祉士会は、介護福祉士の職能団体として倫理綱領と、具体的な倫理上の行動指針として会員が取るべき行動に係る倫理基準(行動規範)を公開しています。
日本介護福祉士会 倫理綱領
1995年11月17日宣言
前文
私たち介護福祉士は、介護福祉ニーズを有するすべての人々が、住み慣れた地域において安心して老いることができ、そして暮らし続けていくことのできる社会の実現を願っています。
そのため、私たち日本介護福祉士会は、一人ひとりの心豊かな暮らしを支える介護福祉の専門職として、ここに倫理綱領を定め、自らの専門的知識・技術及び倫理的自覚をもって最善の介護福祉サービスの提供に努めます。
(利用者本位、自立支援)
- 介護福祉士は、すべての人々の基本的人権を擁護し、一人ひとりの住民が心豊かな暮らしと老後が送れるよう利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重し、自立に向けた介護福祉サービスを提供していきます。
(専門的サービスの提供)
- 介護福祉士は、常に専門的知識・技術の研鑽に励むとともに、豊かな感性と的確な判断力を培い、深い洞察力をもって専門的サービスの提供に努めます。
また、介護福祉士は、介護福祉サービスの質的向上に努め、自己の実施した介護福祉サービスについては、常に専門職としての責任を負います。
(プライバシーの保護)
- 介護福祉士は、プライバシーを保護するため、職務上知り得た個人の情報を守ります。
(総合的サービスの提供と積極的な連携、協力)
- 介護福祉士は、利用者に最適なサービスを総合的に提供していくため、福祉、医療、保健その他関連する業務に従事する者と積極的な連携を図り、協力して行動します。
(利用者ニーズの代弁)
- 介護福祉士は、暮らしを支える視点から利用者の真のニーズを受けとめ、それを代弁していくことも重要な役割であると確認したうえで、考え、行動します。
(地域福祉の推進)
- 介護福祉士は、地域において生じる介護問題を解決していくために、専門職として常に積極的な態度で住民と接し、介護問題に対する深い理解が得られるよう努めるとともに、その介護力の強化に協力していきます。
(後継者の育成)
- 介護福祉士は、すべての人々が将来にわたり安心して質の高い介護を受ける権利を享受できるよう、介護福祉士に関する教育水準の向上と後継者の育成に力を注ぎます。
日本介護福祉士会倫理基準(行動規範)
(利用者本位、自立支援)
- 介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。
- 介護福祉士は、利用者が自己決定できるように、利用者の状態に合わせた適切な方法で情報提供を行います。
- 介護福祉士は、自らの価値観に偏ることなく、利用者の自己決定を尊重します。
- 介護福祉士は、利用者の心身の状況を的確に把握し、根拠に基づいた介護福祉サービスを提供して、利用者の自立を支援します。
(専門的サービスの提供)
- 介護福祉士は、利用者の生活の質の向上を図るため、的確な判断力と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた専門的サービスの提供に努めます。
- 介護福祉士は、常に専門職であることを自覚し、質の高い介護を提供するために向上心を持ち、専門的知識・技術の研鑚に励みます。
- 介護福祉士は、利用者を一人の生活者として受けとめ、豊かな感性を以て全面的に理解し、受容し、専門職として支援します。
- 介護福祉士は、より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます。
- 介護福祉士は、自らの提供した介護について専門職として責任を負います。
- 介護福祉士は、専門的サービスを提供するにあたり、自身の健康管理に努めます。
(プライバシーの保護)
- 介護福祉士は、利用者が自らのプライバシー権を自覚するように働きかけます。
- 介護福祉士は、利用者の個人情報を収集または使用する場合、その都度利用者の同意を得ます。
- 介護福祉士は、利用者のプライバシーの権利を擁護し、業務上知り得た個人情報について業務中か否かを問わず、秘密を保持します。また、その義務は生涯にわたって継続します。
- 介護福祉士は、記録の保管と廃棄について、利用者の秘密が漏れないように慎重に管理・対応します。
(総合的サービスの提供と積極的な連携、協力)
- 介護福祉士は、利用者の生活を支えることに対して最善を尽くすことを共通の価値として、他の介護福祉士及び保健医療福祉関係者と協働します。
- 介護福祉士は、利用者や地域社会の福祉向上のため、他の専門職や他機関と協働し、相互の創意、工夫、努力によって、より質の高いサービスを提供するように努めます。
- 介護福祉士は、他職種との円滑な連携を図るために、情報を共有します。
(利用者ニーズの代弁)
- 介護福祉士は、利用者が望む福祉サービスを適切に受けられるように権利を擁護し、ニーズを代弁していきます。
- 介護福祉士は、社会にみられる不正義の改善と利用者の問題解決のために、利用者や他の専門職と連帯し、専門的な視点と効果的な方法により社会に働きかけます。
(地域福祉の推進)
- 介護福祉士は、地域の社会資源を把握し、利用者がより多くの選択肢の中から支援内容を選ぶことができるよう努力し、新たな社会資源の開発に努めます。
- 介護福祉士は、社会福祉実践に及ぼす社会施策や福祉計画の影響を認識し、地域住民と連携し、地域福祉の推進に積極的に参加します。
- 介護福祉士は、利用者ニーズを満たすために、係わる地域の介護力の増進に努めます。
(後継者の育成)
- 介護福祉士は、常に専門的知識・技術の向上に励み、次世代を担う後進の人材の良き手本となり公正で誠実な態度で育成に努めます。
- 介護福祉士は、職場のマネジメント能力も担い、より良い職場環境作りに努め、働きがいの向上に努めます。
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介護福祉士の倫理綱領の特徴は、後継者の育成が規定されていること。社会福祉士の倫理綱領にはここまで明確な規定はないよ。
過去問
第34回 問題24
- 介護福祉士の職業倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護が必要な人を対象にしているため、地域住民との連携は不要である。
2 全ての人々が質の高い介護を受けることができるように、後継者を育成する。- 3 利用者のためによいと考えた介護を画一的に実践する。
4 利用者に関する情報は、業務以外では公表してよい。
5 利用者の価値観よりも、介護福祉士の価値観を優先する。
1 介護が必要な人を対象にしているため、地域住民との連携は不要である。
誤りです。介護福祉士の行動規範には「地域住民との連携」が規定されています。
2 全ての人々が質の高い介護を受けることができるように、後継者を育成する。
これが正解です。
3 利用者のためによいと考えた介護を画一的に実践する。
誤りです。画一的ではなく個別的に実践します。
4 利用者に関する情報は、業務以外では公表してよい。
誤りです。倫理綱領と行動規範には「プライバシーの保護」が規定されており、社会福祉士及び介護福祉士法でも秘密保持義務が規定されています。
5 利用者の価値観よりも、介護福祉士の価値観を優先する。
誤りです。倫理綱領には「利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重」と規定されています。
第32回 問題25
介護福祉職の倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。1 介護の技術が伴わなくても、利用者の要望を最優先に実施した。2 利用者が求めた医行為は、実施が可能である。3 個人情報の取扱いについて、利用者に説明して同意を得た。4 暴力をふるう利用者を自室から出られないようにした。5 業務が忙しかったので、施設の廊下で職員同士の打合せを行った。
1 介護の技術が伴わなくても、利用者の要望を最優先に実施した。
誤りです。倫理綱領と行動規範には「専門的サービスの提供」が規定されていますので、介護の技術が伴わないといけません。
2 利用者が求めた医行為は、実施が可能である。
誤りです。医行為は利用者が求めていても介護福祉職ではできません。ただし、喀痰吸引&経管栄養は医師の指示のもと実地研修を修了した介護福祉士であれば実施できます。
3 個人情報の取扱いについて、利用者に説明して同意を得た。
これが正解です。
4 暴力をふるう利用者を自室から出られないようにした。
誤りです。行動制限はいけません。
5 業務が忙しかったので、施設の廊下で職員同士の打合せを行った。
誤りです。個人情報が洩れるおそれがあります。
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