介護保険制度では、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、福祉用具の貸与と販売について保険給付の対象になります(原則1割負担、所得に応じて2割負担、3割負担)。
福祉用具貸与
福祉用具貸与の対象は以下の13品目で、要介護度に応じて異なります。
品目 | 要支援 | 要介護 | 機能や構造など | ||||||||||||
1 | 2 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |||||||||
車いす | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 自走用標準型車いす、普通型電動車いす、又は介助用標準型車いす | ||||||||||
車いす付属品 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | クッション、電動補助装置等であって、車いすと一体的に使用されるもの | ||||||||||
特殊寝台 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | サイドレールが取り付けてあるもの、又は取り付け可能なものであって、次のいずれかの機能を有するもの ・背部又は脚部の傾斜角度が調整できる機能 ・床板の高さが無段階に調整できる機能 | ||||||||||
特殊寝台・付属品 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるもの | ||||||||||
床ずれ防止用具 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 次のいずれかに該当するもの ・送風装置又は空気圧調整装置を備えた空気マット ・水等によって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット | ||||||||||
体位変換器 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 空気パッド等を身体の下に挿入することにより、居宅要介護者等の体位を容易に変換できる機能を有するもの(体位の保持のみを目的とするものを除く) | ||||||||||
手すり | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 取付けに際し工事を伴わないもの | |||||||
スロープ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 段差解消のためのものであって、取付けに際し工事を伴わないもの | |||||||
歩行器 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有し、移動時に体重を支える構造を有するものであって、次のいずれかに該当するもの ・車輪を有するものにあっては、体の前及び左右を囲む把手等を有するもの ・四脚を有するものにあっては、上肢で保持して移動させることが可能なもの | |||||||
歩行補助つえ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホーム・クラッチ及び多点杖 | |||||||
認知症老人徘徊感知機器 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 認知症老人が屋外へ出ようとした時等、センサーにより感知し、家族、隣人等へ通報するもの | ||||||||||
移動用リフト (つり具の部分を除く) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 床走行式、固定式又は据置式であり、かつ、身体をつり上げ又は体重を支える構造を有するものであって、その構造により、自力での移動が困難な者の移動を補助する機能を有するもの(取付けに住宅の改修を伴うものを除く) | ||||||||||
自動排泄処理装置 | 〇 | 〇 | 尿又は便が自動的に吸引されるものであり、かつ、尿や便の経路となる部分を分割することが可能な構造を有するものであって、居宅要介護者等又はその介護を行う者が容易に使用できるもの(交換可能部品を除く) |
特定福祉用具販売
福祉用具は原則として貸与になりますが、貸与になじまない以下の福祉用具については販売になります(特定福祉用具販売)。また、一部の福祉用具(スロープ、歩行器など)については貸与と販売の選択制になっています。支給限度基準額は10万円で、その1~3割負担で購入できます。
品目 | 機能や構造等 |
腰掛便座 | 和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの、洋式便器の上に置いて高さを補うもの、電動式又はスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの、便座やバケツ等からなり移動可能である便器 |
自動排泄処理装置の交換可能部品 | 尿又は便が自動的に吸引されるもので居宅要介護者等又はその介護を行う者が容易に使用できるもの |
排泄予測支援機器 | 利用者が常時装着した上で、膀胱内の状態を感知し、尿量を推定するものであって、一定の量に達したと推定された際に、排尿の機会を居宅要介護者等又はその介護を行う者に自動で通知するもの |
入浴補助用具 | 入浴用いす、入浴台、浴槽用手すり、浴室内すのこ、浴槽内いす、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト |
簡易浴槽 | 空気式又は折りたたみ式等で容易に移動できるものであって、取水又は排水のために工事を伴わないもの |
移動用リフトのつり具部分 | 身体に適合するもので、移動用リフトに連結可能なもの。 |
スロープ | 貸与の「スロープ」のうち、主に敷居等の小さい段差の解消に使用し、頻繁な持ち運びを要しないもの(可搬型のものは除く) |
歩行器 | 貸与の「歩行器」のうち、脚部が全て杖先ゴム等の形状となる固定式又は交互式歩行器(車輪・キャスターが付いている歩行車は除く) |
歩行補助つえ | カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチおよび多点杖 |
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排泄関係と入浴関係は使いまわしができないので購入しないといけないね。
住宅改修
福祉用具導入の際に必要となる段差の解消や手すりの設置などの住宅改修も、介護保険給付の対象になっています。対象となる住宅改修は以下の通りです。
・手すりの取付け
・段差の解消
・滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取替え
・洋式便器等への便器の取替え
・その他、上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
住宅改修は原則1人1回しか保険給付を受けられません。ただし転居した場合や要介護度が3段階以上上がった場合には再度支給の対象になります。支給限度基準額は一律20万円までとなっています。
過去問
第36回 問題69
- Bさん(61歳、男性、要介護3)は、脳梗塞(cerebral infarction)による左片麻痺{ひだりかたまひ}がある。週2回訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用し、妻(58歳)と二人暮らしである。自宅での入浴が好きで、妻の介助を受けながら、毎日入浴している。サービス提供責任者に、Bさんから、「浴槽から立ち上がるのがつらくなってきた。何かいい方法はないですか」と相談があった。
Bさんへのサービス提供責任者の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Bさんがひとりで入浴できるように、自立生活援助の利用を勧める。
2 浴室を広くするために、居宅介護住宅改修費を利用した改築を勧める。
3 妻の入浴介助の負担が軽くなるように、行動援護の利用を勧める。
4 入浴補助用具で本人の力を生かせるように、特定福祉用具販売の利用を勧める。
5 Bさんが入浴を継続できるように、通所介護(デイサービス)の利用を勧める。
選択肢4が正解です。入浴用手すりや浴槽内いすは、特定福祉用具販売の対象です。
社会福祉士 第33回 問題133
事例を読んで、X事業者(福祉用具貸与事業者及び特定福祉用具販売事業者)に勤務するE福祉用具専門相談員(社会福祉士)が行う支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
E福祉用具専門相談員は、Y居宅介護支援事業所のF介護支援専門員からの依頼で、R市で一人暮らしをしているGさん(女性、84歳、要介護1 )の自宅を訪問し、福祉用具の選定に関する相談を行うこととなった。Gさんは約10年前の大腿骨頸部骨折の後遺症により股関節が動きにくくなり、現在では浴槽への出入りと屋外での移動に支障がある。しかし、その他の日常生活動作や認知機能に支障はなく、状態も安定している。GさんはこれまでT字杖以外の福祉用具は使用したことがない。
1 Gさんに、福祉用具貸与による入浴補助用具の給付が可能と説明した。
2 Gさんに、特定福祉用具販売による自宅廊下の手すりの設置が可能と説明した。
3 Gさんに屋外での移動のため、福祉用具貸与による歩行器の利用が可能と説明した。
4 Gさん及びF介護支援専門員と相談した上で福祉用具貸与計画と特定福祉用具販売計画を作成し、利用前にR市に提出して承認を得た。
5 Gさんが将来、身体状況が悪化したときのことを想定して、玄関の段差を解消するために移動用リフトを設置した方がよいと説明した。
1 Gさんに、福祉用具貸与による入浴補助用具の給付が可能と説明した。
誤りです。入浴補助用具は福祉用具貸与ではなく特定福祉用具販売の対象品目です。
2 Gさんに、特定福祉用具販売による自宅廊下の手すりの設置が可能と説明した。
誤りです。廊下の手すりの設置は、特定福祉用具販売ではなく住宅改修の対象です。
3 Gさんに屋外での移動のため、福祉用具貸与による歩行器の利用が可能と説明した。
これが正解、歩行器は福祉用具貸与の対象品目です。
4 Gさん及びF介護支援専門員と相談した上で福祉用具貸与計画と特定福祉用具販売計画を作成し、利用前にR市に提出して承認を得た。
誤りです。市への事前申請が必要なのは、住宅改修です。
5 Gさんが将来、身体状況が悪化したときのことを想定して、玄関の段差を解消するために移動用リフトを設置した方がよいと説明した。
誤りです。将来への備えは、給付の対象外です。
第36回 問題104
- 福祉用具を活用するときの基本的な考え方として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1 福祉用具が活用できれば、住宅改修は検討しない。
- 2 複数の福祉用具を使用するときは、状況に合わせた組合せを考える。
- 3 福祉用具の選択に迷うときは、社会福祉士に選択を依頼する。
- 4 家族介護者の負担軽減を最優先して選ぶ。
- 5 福祉用具の利用状況のモニタリング(monitoring)は不要である。
選択肢2が正解です。
第36回 総合問題2
次の事例を読んで、問題117から問題119までについて答えなさい。
〔事 例〕
Dさん(70歳、男性)は、自宅で妻と二人暮らしで、年金収入で生活している。ある日、車を運転中に事故に遭い救急搬送された。医師からは、第4胸髄節まで機能が残存している脊髄損傷(spinal cord injury)と説明を受けた。Dさんは、入院中に要介護3の認定を受けた。
Dさんは、退院後は自宅で生活することを望んでいた。妻は一緒に暮らしたいと思うが、Dさんの身体状況を考えると不安を感じていた。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、「退院後は、在宅復帰を目的に、一定の期間、リハビリテーション専門職がいる施設で生活してはどうか」とDさんに提案した。Dさんは妻と退院後の生活について話し合った結果、一定期間施設に入所して、その間に、自宅の住宅改修を行うことにして、介護支援専門員(ケアマネジャー)に居宅介護住宅改修費について相談した。
問題117
- 次のうち、Dさんが提案を受けた施設として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1 養護老人ホーム
2 軽費老人ホーム
3 介護老人福祉施設
4 介護老人保健施設
5 介護医療院
在宅復帰を目的にした施設ということで、選択肢4の老健が正解です。
問題118
- 次のうち、介護支援専門員(ケアマネジャー)がDさんに説明する居宅介護住宅改修費の支給限度基準額として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 10万円
- 2 15万円
3 20万円- 4 25万円
- 5 30万円
選択肢3の20万円が正解です。
問題119
- Dさんが施設入所してから3か月後、住宅改修を終えた自宅に戻ることになった。Dさんは自宅での生活を楽しみにしている。その一方で、不安も抱えていたため、担当の介護福祉士は、理学療法士と作業療法士に相談して、生活上の留意点を記載した冊子を作成して、Dさんに手渡した。
次の記述のうち、冊子の内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 食事では、スプーンを自助具で手に固定する。
2 移動には、リクライニング式車いすを使用する。
3 寝具は、エアーマットを使用する。- 4 更衣は、ボタンエイドを使用する。
5 外出するときには、事前に多機能トイレの場所を確認する。
Dさんは車いすの生活になっていると考えられるため、選択肢5が正解です。
社会福祉士 第29回 問題129
介護保険法に定める福祉用具貸与の種目として、正しいものを2つ選びなさい。
1 認知症老人徘徊感知機器
2 入浴用椅子
3 腰掛便座
4 簡易浴槽
5 自動排泄処理装置
基本的に排泄関係と入浴関係は貸与ではなく購入しなければなりません。
使い回しができないので。ですので選択肢2,3,4は間違いです。
自動排泄処理装置は尿や便が自動的に吸引されるもので、構造上尿や便の経路となる部分を分割でき、本体部分は福祉用具貸与の対象になっていますので選択肢5は正解です。
残った選択肢1も正解です。
次の記事
次は、老人ホームなどの高齢者の住まいについて。
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