介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」に規定されており、社会福祉士とともに5つの義務・責務が規定されています。見ていきましょう。
介護福祉士とは
社会福祉士および介護福祉士法には「介護福祉士」について以下のように規定されています。
「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう。
介護福祉士の5義務+名称独占
社会福祉士及び介護福祉士法には、介護福祉士の5つの義務と名称の使用制限が規定されています。
・誠実義務
介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて誠実にその業務を行わなければならないとされています。
・信用失墜行為の禁止
介護福祉士は、その信用を傷つける行為をしてはならないとされています。信用失墜行為の禁止に違反すると登録取消もあり得ます。
・秘密保持義務
介護福祉士は、正当な理由がなくその業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならないとされ、しかも介護福祉士でなくなった後でも秘密保持義務は継続します。秘密保持義務に違反すると登録取消もあり得ます。さらに1年以下の懲役または30万円以下の罰金もあり得ます。
・福祉サービス関係者等との連携
福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならないとされています。
・資質向上の責務
介護福祉士は介護に関する知識および技能の向上に努めなければなりません。
・名称の使用制限
介護福祉士でない者は介護福祉士の名称は用いられないということで、介護福祉士は「名称独占」資格です。名称の使用制限に違反すると、30万円以下の罰金があり得ます。
「業務独占」資格ではないので、介護業務は介護福祉士でなくても行えます。
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介護福祉士の名称を使いたければ、国家試験に合格するだけではだめだよ。ちゃんと登録しないと。登録料がかかるけど。
介護福祉士の義務 | 違反による登録取消の可能性 | 違反による罰則 |
---|---|---|
誠実義務 | ||
信用失墜行為の禁止 | 〇 | |
秘密保持義務 | 〇 | 一年以下の懲役または三十万円以下の罰金 |
資質向上の責務 | ||
連携 | ||
名称の使用制限 | 三十万円以下の罰金 |
社会福祉士及び介護福祉士法の変遷
1987年 制定
制定時は「信用失墜行為の禁止」「連携」「秘密保持義務」「名称の使用制限」が規定されていました。
2007年 改正
誠実義務と資質向上の責務が追加され、さらに連携についてはそれまで医療関係者との連携だったものが、福祉サービス関係者等との連携となっています。
2012年 改正
喀痰吸引や経管栄養といった一部の医療行為を介護職員も行えるようになりました。
・その他の介護職員が喀痰吸引を行うためには、基本研修&実地研修を修了する必要あり
介護福祉士の義務 | 2007年以前 | 2007年以降 |
---|---|---|
誠実義務 | 〇 | |
信用失墜行為の禁止 | 〇 | 〇 |
秘密保持義務 | 〇 | 〇 |
資質向上の責務 | 〇 | |
連携 | 医師その他医療関係者との連携 | 福祉サービス関係者等との連携 |
名称の使用制限 | 〇 | 〇 |
過去問
第31回 問題18
社会福祉士及び介護福祉士法における介護福祉士の義務として、適切なものを1つ選びなさい。
1 家族介護者の介護離職の防止
2 医学的管理
3 日常生活への適応のために必要な訓練
4 福祉サービス関係者等との連携
5 子育て支援
選択肢4が正解です。
第35回 問題66
- 社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている介護福祉士の責務として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域生活支援事業その他の支援を総合的に行う。
2 介護等に関する知識及び技能の向上に努める。
3 肢体の不自由な利用者に対して必要な訓練を行う。
4 介護保険事業に要する費用を公平に負担する。
5 常に心身の健康を保持して、社会的活動に参加するように努める。
選択肢2「資質向上の責務」が正解です。
第32回 問題25
介護福祉職の倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護の技術が伴わなくても、利用者の要望を最優先に実施した。
2 利用者が求めた医行為は、実施が可能である。
3 個人情報の取扱いについて、利用者に説明して同意を得た。
4 暴力をふるう利用者を自室から出られないようにした。
5 業務が忙しかったので、施設の廊下で職員同士の打合せを行った。
選択肢3が正解です。
第36回 問題65
- 介護福祉士に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 傷病者に対する療養上の世話又は診療の補助を業とする。
2 喀痰吸引を行うときは市町村の窓口に申請する。
3 業務独占の資格である。
4 資格を更新するために5年ごとに研修を受講する。
5 信用を傷つけるような行為は禁止されている。
1 傷病者に対する療養上の世話又は診療の補助を業とする。
誤りです。これは看護師の役割です。
2 喀痰吸引を行うときは市町村の窓口に申請する。
誤りです。喀痰吸引を行うときは、その事業所が都道府県知事の登録を受けなければなりません。
3 業務独占の資格である。
誤りです。名称独占の資格です。
4 資格を更新するために5年ごとに研修を受講する。
誤りです。介護福祉士国家資格は更新制ではありません。5年ごとの更新が必要なのは介護支援専門員(ケアマネジャー)です。
5 信用を傷つけるような行為は禁止されている。
これが正解です。社会福祉士及び介護福祉士法には「信用失墜行為の禁止」を含む義務・責務が規定されています。
第37回 問題65
- 社会福祉士及び介護福祉士法に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 資質向上のために、5年に1回、資格更新研修を受けなければならない。
2 社会福祉士の業務を介護福祉士が行うことは禁じられている。
3 介護福祉士の信用を傷つける行為をしてはならない。
4 介護福祉士は、その業を辞した後は秘密保持義務が解除される。
5 介護福祉士国家試験に合格した日から、介護福祉士を名乗ることができる。
1 資質向上のために、5年に1回、資格更新研修を受けなければならない。
誤りです。介護福祉士国家資格に更新は必要ありません。
2 社会福祉士の業務を介護福祉士が行うことは禁じられている。
誤りです。社会福祉士は業務独占資格ではありません。
3 介護福祉士の信用を傷つける行為をしてはならない。
これが正解、信用失墜行為の禁止が規定されています。
4 介護福祉士は、その業を辞した後は秘密保持義務が解除される。
誤りです。秘密保持義務は介護福祉士の業務を辞した後も継続します。
5 介護福祉士国家試験に合格した日から、介護福祉士を名乗ることができる。
誤りです。合格後に登録してはじめて介護福祉士を名乗ることができます。
次の記事
次は、介護福祉士の倫理綱領について。
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