福祉計画は覚えることが多いですが、特に障害関係の福祉計画は以下の3つ、それぞれの関係性も含めて覚えていきましょう。
障害者計画 | 障害福祉計画 | 障害児福祉計画 | |
---|---|---|---|
所管 | 内閣府 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
根拠法 | 障害者基本法 | 障害者総合支援法 | 児童福祉法 |
策定義務 | 国(内閣総理大臣) 都道府県 市町村 |
都道府県 |
都道府県 市町村 (3年毎) |
福祉計画
福祉計画は覚えにくいですが、地域福祉関係、高齢関係、障害関係、児童関係、健康・医療関係、その他とまとめて、それぞれの計画の関係性を学んでいけば記憶に残ります。
下の表に全てまとまっていますので、表が全てです。

計画はそれぞれ「市町村」「都道府県」「国」が策定するのですが、計画によって国や市町村に策定義務がなかったり、義務ではなく努力義務だったりと様々です。
表の上から順番に見ていきましょう。
地域福祉関係
地域福祉(支援)計画
地域福祉計画は策定義務がなく「努力義務」なのに国家試験によく出題されます。2000年の社会福祉法制定時には任意作成だったのが、2018年度に社会福祉法が改正され努力義務になり、少しずつその重要性が高まってきているからです。
市町村が策定するのは市町村地域福祉計画、都道府県が策定するのは都道府県地域福祉支援計画です。

都道府県の計画には「支援」が付くよ。
この計画には国が定める基準や上位計画がありません。
市町村や都道府県が地域に根差した計画を策定するようになっています。
地域福祉活動計画
地域福祉活動計画は、地域福祉の推進に取り組むための実践的な計画として、社会福祉協議会が策定する行動計画です。私の住む京都市の社会福祉協議会の地域福祉活動計画は下の写真のようなものです。
社会福祉協議会という民間の社会福祉法人が策定する行動計画で、根拠法もなく、策定義務もありません。

地域福祉計画は社会福祉法を根拠法とし、都道府県や市町村が策定する計画なので混同しないよう注意だよ。

高齢関係
介護保険事業(支援)計画&老人福祉計画
介護保険法で規定される介護保険事業(支援)計画、そして老人福祉法で規定される老人福祉計画、高齢者関係の計画がこの2つです。都道府県が策定するのは介護保険事業支援計画、市町村が策定するのは介護保険事業計画です。

高齢者福祉は、介護保険法と老人福祉法の二本立てだったね。
重要なことは、たくさんある計画の中でこの2つだけ「一体として策定しなければならない」とされていることです。
介護保険法と老人福祉法に規定されているサービスは、例えば特別養護老人ホームなど被っているものが多いので当然一体として策定されないとつじつまが合わなくなります。
そして、3年毎に策定義務があることも覚えておいてください。
これは他の計画との関連性で再度下に出てきます。
計画を完成・変更したら市町村は都道府県に、都道府県は厚生労働大臣に提出しなければなりません。
障害関係
障害者計画
障害者基本法を根拠法として市町村と都道府県は障害者計画を定めなければなりません。
さらにこの計画は内閣総理大臣が障害者基本計画を策定します。厚生労働大臣ではありません。

障害者基本法は内閣府が所管していて、後に出てくる障害福祉計画は厚生労働省の所管だよ。障害者基本法は、福祉だけでなく、教育、経済、行政、農業などなど分野が多岐にわたるので内閣府が所管しているんだね。
国の上位計画である「障害者基本計画」をもとに都道府県と市町村は「障害者計画」を策定します。
計画を策定するときは、合議制の機関の意見を聞かなければなりません。
合議制の機関は、市町村は任意設置ですが都道府県は必置です。
障害福祉計画&障害児福祉計画
障害者総合支援法に基づく障害福祉計画、児童福祉法に基づく障害児福祉計画、これらは「一体として策定することができる」とされています。
一体でなくてもかまいません。
介護保険事業計画と同じように3年毎に策定しなければなりません。
そして、計画を完成・変更したら市町村は都道府県に、都道府県は厚生労働大臣(障害児福祉計画は内閣総理大臣)に提出しなければなりません。
障害福祉計画については先ほどの障害者計画と同じように合議制の機関を設置している場合には(都道府県は必置)その意見を聞かなければなりません。
さらに都道府県は協議会(任意設置)を設置している場合には、協議会の意見も聞かなければなりません。

協議会というのは「自立支援協議会」のことだね。
ここまで障害福祉関係の計画が3つ出てきたのでまとめます。

障害者計画 | 障害福祉計画 | 障害児福祉計画 | |
---|---|---|---|
所管 | 内閣府 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
根拠法 | 障害者基本法 | 障害者総合支援法 | 児童福祉法 |
策定義務 | 国(内閣総理大臣) 都道府県 市町村 |
都道府県 |
都道府県 市町村 (3年毎) |
児童関係
子ども・子育て支援事業計画
子ども・子育て支援法の管轄は内閣府ですから、内閣総理大臣が基本指針を定めて、それに基づいて都道府県、市町村は子ども・子育て支援事業計画を策定します。

子ども・子育て支援法の管轄は厚生労働省ではないよ。内閣府だよ。少子化対策は国全体の問題だからだね。
この計画は5年毎に策定し、市町村は都道府県に、都道府県は内閣総理大臣に提出しなければなりません。
子ども子育て支援法第61条には、子ども子育て支援事業計画に定めるべき内容が規定されています。
・特定地域型保育事業所に係る必要利用定員総数
・教育・保育提供区域ごとの当該教育・保育提供区域における各年度の地域子ども・子育て支援事業の量の見込み並びに実施しようとする地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保の内容及びその実施時期
・子どものための教育・保育給付に係る教育・保育の一体的提供及び当該教育・保育の推進に関する体制の確保の内容
・子育てのための施設等利用給付の円滑な実施の確保の内容
市町村は子ども子育て支援事業計画の策定に当たっては審議会その他の合議制の会議を置くよう努め、設置している場合はその意見を聞かなければなりません。
次世代育成支援のための行動計画
単に「行動計画」と呼ばれたりします。
行動計画には以下の2種類あります。
特定事業主行動計画:国および地方公共団体の機関が策定
行動計画で特筆すべき点は、従業員101人以上をかかえる一般事業主に策定義務があるということです。
これは全計画の中で唯一なので出題されやすいです。
一般事業主行動計画には以下の内容を盛り込まなければなりません。
市町村行動計画や都道府県行動計画は「策定することができる」となっており義務ではありません。
内閣総理大臣の定める基本指針に即して5年ごとに策定します。
子どもの貧困対策計画
子どもの貧困対策推進法に基づいて、政府は子どもの貧困対策に関する大綱を定めなければなりません。
都道府県は大綱を勘案して「都道府県子どもの貧困対策計画」を定めるよう努めます。
こども計画
2023年から「こども基本法」が施行され、「こども計画」の策定が都道府県と市町村の努力義務となりました。

こども計画の策定は、都道府県と市町村の努力義務であることを覚えておいてね。
それから「こども・若者計画」や「子どもの貧困対策計画」等と一体のものとして策定できるという点も重要。
医療・健康関係
医療計画
ここからは医療健康関係の計画です。
まずは医療法に基づく医療計画ですが、これは市町村や国は作成せず、都道府県のみ策定義務があります。
さらに医療計画は6年毎に作成しなければならないのですが、記憶に残りやすいようになぜ6年かということについて下で書いています。
医療計画を策定・変更したときは、厚生労働大臣に提出しなければなりません。

医療計画は都道府県が策定するものだから厚生労働大臣に提出するよ。
市町村が都道府県を飛び越えて厚生労働大臣に提出することはないからね。
市町村計画&都道府県計画
市町村:策定できる
都道府県:策定できる
国:厚生労働大臣が総合確保方針を定める
医療介護総合確保推進法に基づいて市町村計画と都道府県計画というものがあります。
これは策定義務はありませんが他計画と関連付けて後からでてきます。
医療費適正化計画
医療費適正化計画は高齢者医療確保法に基づいて、都道府県および国が6年毎に策定することになっています。
2018年度までは5年毎の策定でしたが、以降6年毎の策定義務となっています。

これはおそらく医療計画が2018年度から6年毎の策定になったのに合わせたんだと思うよ。国は医療費適正化計画に加えて医療費適正化指針を策定し、それに基づいて都道府県は医療費適正化計画を策定し、厚生労働大臣に提出するよ。
健康増進計画
市町村:努力義務
都道府県:義務
国:厚生労働大臣が基本指針を定める
第八条 都道府県は、基本方針を勘案して、当該都道府県の住民の健康の増進の推進に関する施策についての基本的な計画(都道府県健康増進計画)を定めるものとする。2 市町村は、基本方針及び都道府県健康増進計画を勘案して、当該市町村の住民の健康の増進の推進に関する施策についての計画(市町村健康増進計画)を定めるよう努めるものとする。
各計画間の関係
上でも書いたように各計画間で「一体として策定しなければならない」などの縛りがありますのでまとめます。
・「障害福祉計画」と「障害児福祉計画」は一体として策定できる
・「市町村介護保険事業計画」と「市町村計画」は整合性の確保が保たれたものでなければならない
・「都道府県介護保険事業支援計画」と「都道府県計画」と「医療計画」は整合性の確保が保たれたものでなければならない
この「整合性の確保」が求められる計画について、医療計画は市町村には策定義務がないので2つの計画の整合性で良いのですが、都道府県には3つの計画の整合性が必要です。
都道府県計画:策定期間の定めなし
医療計画:6年毎(2018年度から)
介護保険事業支援計画の策定が2018年で医療計画の策定年と重なったことから、その年以降医療計画の策定を5年毎から6年毎にすることで、6年後に策定年が再び重なります。
都道府県計画は何年毎でもよいので、これら3計画の策定年が重なるように医療計画を6年毎に変更したわけです。
すると次の策定は2024年になります。
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護などの社会保障費の増大が懸念される「2025年問題」が待っています。
その前年に策定年を設定したのです。
その他の計画や指針など
以下は余裕があれば覚えてください。
自殺対策計画
2016年の自殺対策基本法の改正によって、自殺対策計画は都道府県と市町村に策定が義務化されました。このころは年間の自殺者が3万人を超えていました。
アルコール健康障害対策推進計画
アルコール健康障害対策基本法に基づいて政府が基本計画を策定し、都道府県にはアルコール健康障害対策推進計画の策定の努力義務が課せられています。
自立促進計画
母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づいて、厚生労働大臣は基本指針を定めます。
都道府県と市及び福祉事務所設置の町村はこの基本指針に即して自立促進計画を策定します。
まとめ
計画 | 市町村 | 都道府県 | 国 | 一般事業主 | 根拠法 | |
---|---|---|---|---|---|---|
地域福祉 | 地域福祉(支援)計画 | 努力義務 | 努力義務 | – | – | 社会福祉法 |
地域福祉活動計画 | 社会福祉協議会が任意で策定 | – | – | 無し | ||
高齢 | 介護保険事業(支援)計画 | 3年毎の義務 | 3年毎の義務 | 基本指針(厚生労働大臣) | – | 介護保険法 |
老人福祉計画 | 義務 | 義務 | – | – | 老人福祉法 | |
障害 | 障害者計画 | 義務 | 義務 | 障害者基本計画(内閣総理大臣) | – | 障害者基本法 |
障害福祉計画 | 3年毎の義務 | 3年毎の義務 | 基本指針(厚生労働大臣) | – | 障害者総合支援法 | |
障害児福祉計画 | 3年毎の義務 | 3年毎の義務 | 基本指針(内閣総理大臣) | – | 児童福祉法 | |
児童 | 子ども・子育て支援事業計画 | 5年毎の義務 | 5年毎の義務 | 基本指針(内閣総理大臣) | – | 子ども・子育て支援法 |
次世代育成支援のための行動計画 | 5年毎の任意 | 5年毎の任意 | 主務大臣が指針策定 | 従業員101人以上は義務 | 次世代育成支援対策推進法 | |
こども計画 | 努力義務 | 努力義務 | こども大綱(政府) | – | こども基本法 | |
健康・医療 | 医療計画 | – | 6年毎の義務 | 基本方針(厚生労働大臣) | – | 医療法 |
市町村・都道府県計画 | 任意 | 任意 | 総合確保方針(厚生労働大臣) | – | 医療介護総合確保推進法 | |
医療費適正化計画 | – | 6年毎の義務 | 計画と方針(厚生労働大臣) | – | 高齢者医療確保法 | |
健康増進計画 | 努力義務 | 義務 | 基本方針(厚生労働大臣) | – | 健康増進法 | |
アルコール健康障害対策推進計画 | – | 努力義務 | 基本計画(政府) | – | アルコール健康障害対策基本法 | |
その他 | 自殺対策計画 | 義務 | 義務 | 自殺総合対策大綱(政府) | – | 自殺対策基本法 |
自立促進計画 | – | 努力義務 | 基本方針(内閣総理大臣) | – | 母子及び父子並びに寡婦福祉法 | |
基本計画 | 努力義務 | 義務 | 基本方針 (内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣及び厚生労働大臣) | – | DV防止法 |
※青色アンダーラインは「一体として策定しなければならない」
※黄色アンダーラインは「一体として策定できる」
※赤色アンダーラインは「整合性の確保が保たれたものでなければならない」

〇年ごとに作成というルールは、介護保険事業計画、子ども・子育て支援事業計画、医療計画、医療費適正化計画、については法律に明記されているけど、障害福祉計画、障害児福祉計画は法律には規定されてなくて、「3年ごとを基本」としつつも、都道府県及び市町村が地域の実情や報酬改定・制度改正の影響の有無を考慮して、柔軟な期間設定が可能とされているよ。
過去問
第32回 問題11
障害福祉計画に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 厚生労働大臣は基本的な指針を定めなければならない。
2 都道府県による策定は努力義務である。
3 市町村による策定は努力義務である。
4 障害児福祉計画とは計画期間が異なっている。
5 文化芸術活動・スポーツの振興についての目標設定をしなければならない。
1 厚生労働大臣は基本的な指針を定めなければならない。
これが正解です。
2 都道府県による策定は努力義務である。
間違いです。都道府県には策定義務があります。
3 市町村による策定は努力義務である。
間違いです。市町村にも策定義務があります。
4 障害児福祉計画とは計画期間が異なっている。
障害福祉計画と障害児福祉計画は「一体として策定できる」とされており、障害福祉計画には3年毎の策定義務があることと併せて考えると、ほとんどの自治体では一体として3年毎に策定されています。
5 文化芸術活動・スポーツの振興についての目標設定をしなければならない。
このようなことは規定されていません。
2018年に「障害者文化芸術活動推進法」が施行され、その中で基本計画の策定が規定されています。
その基本計画では文化芸術活動の目標設定についても規定されていますので、設問文はこのことを言っているのでしょう。
第26回 問題9
市町村における社会福祉に関する計画として、正しいものを1つ選びなさい。1 老人福祉計画は、その市町村内に老人福祉施設がなければ、策定しなくてもよい。2 障害者計画は、18歳以上の障害者を対象としていて、障害児を含まない。3 介護保険事業計画は、第1号被保険者の保険料の設定に関与している。4 地域福祉計画は、市町村社会福祉協議会に策定が義務づけられている。5 障害福祉計画は、具体的なサービスの量を設定しない。
1 老人福祉計画は、その市町村内に老人福祉施設がなければ、策定しなくてもよい。
誤りです。老人福祉計画の策定は市町村と都道府県の義務です。
2 障害者計画は、18歳以上の障害者を対象としていて、障害児を含まない。
誤りです。障害者計画は障害児も対象です。
3 介護保険事業計画は、第1号被保険者の保険料の設定に関与している。
これが正解です。
4 地域福祉計画は、市町村社会福祉協議会に策定が義務づけられている。
誤りです。地域福祉計画の策定は市町村と都道府県の努力義務です。
5 障害福祉計画は、具体的なサービスの量を設定しない。
誤りです。障害福祉計画には具体的なサービス量を設定します。これが障害者計画と異なる点です。
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ここまでで、難しい法制度などの内容は終了です。ピークは越えました。
次は、様々なマークについて。
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