ここで紹介するサルコペニア、フレイルなどのキーワードは国家試験に頻出です。しっかり区別して覚えましょう。
機能低下3つの概念
サルコペニア
サルコペニアは、加齢により全身性の筋肉量が減少し、筋力が低下した状態です。
サルコペニアの語源は、ギリシャ語の「サルコ(筋肉)」と「ペニア(減少)」です。
フレイル
フレイルとは、加齢により心身が老い衰え、要介護に陥りやすい状態です。
フレイルは英語のフレイルティ(Frailty)が語源で、「虚弱」「老衰」「脆弱」という意味です。
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サルコペニアからフレイルになって、さらに進行すると要介護状態になるね。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態のことを表し、2007年に日本整形外科学会によって提唱された概念です。
ロコモーション(locomotion)は英語で「移動」の意味、つまり移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。
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通称は「ロコモ」だね。
ロコモ度1 | 移動機能の低下が始まった状態 |
ロコモ度2 | 移動機能の低下が進行した状態 |
ロコモ度3 | 移動機能の低下が進行し社会参加に支障をきたしている状態(身体的フレイル) |
サルコペニアもフレイルも加齢による影響ですが、ロコモティブシンドロームは加齢だけでなく、骨粗鬆症、変形性脊椎症、変形性膝関節症などの運動器疾患など原因は様々です。加齢によるロコモティブシンドロームはフレイルやサルコペニアとも重なり、明確には区別できません。
過去問
第29回 問題5
健康長寿社会に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 WHO(世界保健機関)は、健康とは病気や障害がないことであると定義している。
2 健康寿命を延ばすために、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)対策が重要である。
3 2010年(平成22年)時点の日本における平均寿命と健康寿命の差は、男性が約5年、女性が約8年である。
4 2014年(平成26年)時点の日本におけるがん(cancer)の部位別にみた死亡者数は、男女ともに胃がん(gastric cancer)が最も多い。
5 「健康日本21(第2次)」における飲酒に関する目標には、未成年者の飲酒防止は含まれていない。
1 WHO(世界保健機関)は、健康とは病気や障害がないことであると定義している。
誤りです。WHO憲章では「健康とは、完全な 肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」とされています。
2 健康寿命を延ばすために、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)対策が重要である。
これが正解です。
3 2010年(平成22年)時点の日本における平均寿命と健康寿命の差は、男性が約5年、女性が約8年である。
誤りです。男性では10年弱、女性では10年強となっています。詳しくはこちら。
4 2014年(平成26年)時点の日本におけるがん(cancer)の部位別にみた死亡者数は、男女ともに胃がん(gastric cancer)が最も多い。
誤りです。男性は肺がん、女性は大腸がんが最多です。詳しくはこちら。
5 「健康日本21(第2次)」における飲酒に関する目標には、未成年者の飲酒防止は含まれていない。
誤りです。「健康日本21(第2次)」では、過度の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒を減少させることを目標に掲げています。
精神保健福祉士 第27回 問題12
A精神科病院に長期入院していたBさん(64歳)は、地域移行支援を受けた後、1年前からC生活介護事業所を利用しながら地域のアパートで一人暮らしをしている。Bさんの食生活は整っており、血圧·血糖値·コレステロールや中性脂肪には問題がなかった。しかし近頃は、長年の運動不足から筋力が低下したことによって、短時間の歩行でも息切れをし、足が上がりにくくC事業所内の階段もすぐには上れない状態が目立ち始めた。そこでC事業所では、Bさんやほかの利用者の状況も鑑み、運動プログラムを取り入れ、Bさんにも参加してもらうよう促すことにした。
次のうち、Bさんの状態を表す症候群として、適切なものを1つ選びなさい。
1 コルサコフ症候群
2 メタボリック症候群
3 ロコモティブ症候群
4 悪性症候群
5 ガンザー症候群
選択肢3が正解です。
第33回 問題114
次の事例を読んで、問題に答えなさい。
〔事 例〕
Jさん(83歳、女性)は一人暮らしである。人と付き合うのが苦手で、近所付き合いもあまりなく、一人で静かに生活していた。80歳を過ぎた頃から右膝に痛みが出て、変形性膝関節症(knee osteoarthritis)と診断されたが、近くのスーパーへの買物や、近所の散歩には出かけていた。1か月ほど前から膝の痛みが悪化し、散歩にも行かなくなった。食事量が減って痩せてきてしまい、一日中、座ってテレビを見て過ごしている。
現在のJさんに心配される病態として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 フレイル(frailty)2 不定愁訴3 寛解4 不穏4 せん妄(delirium)
選択肢1のフレイルが正解です。
社会福祉士 第32回 問題129
介護予防に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 指標としての健康寿命とは、健康状態で生活することが期待される平均期間である。
2 サルコペニアとは、加齢によって予備力が低下し、ストレスへの回復力が低下した状態で、要介護状態の前段階といえる。
3 2016年(平成28年)における平均寿命と健康寿命の差は、女性より男性の方が大きい。
4 フレイルとは、高齢期の筋量や筋力の低下、それに伴う身体機能低下で、サルコペニアの要因の一つである。
5 予防・健康づくりの推進のための介護予防と生活習慣病対策・フレイル対策は、一体的に介護保険で行われている。
1 指標としての健康寿命とは、健康状態で生活することが期待される平均期間である。
これが正解です。
2 サルコペニアとは、加齢によって予備力が低下し、ストレスへの回復力が低下した状態で、要介護状態の前段階といえる。
サルコペニアは筋力が低下した状態なので、要介護状態の前段階のような深刻な状態ではありません。
3 2016年(平成28年)における平均寿命と健康寿命の差は、女性より男性の方が大きい。
間違いです。男性:8.84年、女性:12.35年となっていて、男性は平均寿命が女性より短いのですが、女性より不健康である期間は短いので幸せかもしれません。
4 フレイルとは、高齢期の筋量や筋力の低下、それに伴う身体機能低下で、サルコペニアの要因の一つである。
フレイルはサルコペニアの要因の1つではなく、サルコペニアが進行することでフレイルになります。
5 予防・健康づくりの推進のための介護予防と生活習慣病対策・フレイル対策は、一体的に介護保険で行われている。
介護保険だけではなく、医療保険もですね。
次の記事
次は、人間の成長と発達について。
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