学習性無力感とは
学習性無力感とは、米国の心理学者マーティン・セリグマンが1967年に発表した概念で、抵抗したり回避したりすることができないストレスの渦中に置かれているうちに、そのストレスから逃れようとする行動を起こさなくなってしまう現象のことです。
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努力が成果に結びつかない体験が繰り返されると、「どうせ自分は・・・」と諦めてしまうね。
犬の実験
アメリカの心理学者セリグマン(M.E.P.Seligman)は、「努力が成果に結びつかない体験を通して無気力が学習されること(学習性無力感)」を、イヌを用いた実験から明らかにしました。

実験では、予告信号のあとに犬に電気ショックを与え、壁を飛び越せば電気ショックを回避できるようにし、「電気ショックを回避できない状況を経験した犬」と「足でパネルを押すことで電気ショックを終了させられる状況を経験した犬」の二つの集団を比較すると、前者の方が回避できない回数が増えました。
つまり、電気ショックを回避できないことを何度も経験する中で無力感を感じて回避行動をとらなくなったということです。
人間の場合であれば、長期に渡り監禁されたり暴力を振るわれたりする状況に置かれた場合、積極的にその状況から抜け出そうとする努力をしなくなります。
少し努力をすればその状況から抜け出せる可能性があったとしても、努力すれば成功するかもしれないという事すら考えられなくなります。
このように努力が成果に結びつかない経験が繰り返されることで、無気力が学習されます。
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人間だけじゃなくて犬でも無気力になるんだねぇ。ワンコがかわいそう・・・
過去問
第31回 問題73
Aさん(95歳、女性、要介護3)は、介護老人福祉施設に入所して6か月になる。
入所間もない頃は、「買物に行きたい」「友達に会いに行きたい」と、いろいろ介護福祉職に要望したが、それらの要望には応えてもらえなかった。
現在Aさんは、認知機能障害はなく、身体的にも大きな変化や異常は認められない。
しかし、ほとんどの時間をベッドで過ごしていて、「どこか行きたいところはないですか」と介護福祉職が聞いても、「ない」と答えるだけである。
Aさんの現在の状態を説明するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 学習性無力感
2 反動形成
3 統合失調症の陰性症状
4 せん妄(delirium)
5 パーソナリティの変化
選択肢1が正解です。
Aさんは、要望を重ねても望む結果が得られない経験・状況が続き、何をしても無意味だと思うようになり、不快な状態を脱する努力を行わなくなりました。これが学習性無力感です。
公認心理師 第1回 問23
学習性無力感はどのような体験が繰り返されることで生じるか。正しいものを1つ選べ。
① 他者から非難される体験
② 特定の課題を遂行する体験
③ 特定の行動を回避する体験
④ 努力が成果に結びつかない体験
⑤ 特定の場面での不安や緊張の体験
選択肢④が正解です。
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次は、高齢者のパーソナリティについて。
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