喪失体験
喪失体験は大切な人やモノを失う体験です。
家族や友人との死別、愛する人との別れ、ペットの死によるペットロス、さらには自分の身体の一部を失う機能障害、大切に使っていた道具を失くすことも喪失体験です。
キューブラー・ロスの「死の受容過程5段階モデル」は、死以外の喪失体験などにも当てはまります。
例えば、大切な人を失ったとき、「死の受容過程」の5段階と同じく、否認→怒り→取引→抑うつ→受容という段階を経ていきます。
悲嘆過程
イギリスの精神分析学者ジョン・ボウルビィによると、例えば愛する人がなくなったとき、その悲嘆過程は原則的に以下の順序で(悲哀の4段階)で推移していきます。
第1段階: 情緒危機
死を事実として受け止められず、死を知らされた直後の急性ストレス反応としての無感情状態です。
第2段階: 否認
喪失を受け止め始めながら、受け止めきれず、深い悲嘆が始まります。
第3段階: 断念
喪失の現実が受け入れられ、絶望を感じ、抑うつ状態に陥ります。
第4段階: 離脱・再建
それまで愛着が向けられてきた故人から離脱し、再建していく段階です。
死前喘鳴(しぜんぜんめい)
死亡直前(死亡数時間前から数日前)になると飲み込む力がなくなるために、唾液や痰がたまってゴロゴロという音がします。
この音を「死前喘鳴」と呼びます。
喘鳴とは呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がすることです。
このとき唾液や痰を吸引するようなことはせず、自然なことなのでそのまま見守るのが一般的です。
過去問
第33回 問題71
高齢期の喪失体験と悲嘆に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 喪失体験とは、加齢に伴う身体機能の低下のことである。
2 悲嘆過程とは、病的な心のプロセスのことである。
3 死別後の悲嘆からの回復には、喪失に対する心理的対処だけでなく生活の立て直しへの対処も必要である。
4 ボウルビィ(Bowlby, J.)によれば、悲嘆過程には順序性はない。
5 身近な人との死別後に生じる病的悲嘆への支援では、亡くなった人への愛着をほかに向けることを目標にする。
1 喪失体験とは、加齢に伴う身体機能の低下のことである。
喪失体験は、愛する人や愛着のあるモノを失う体験です。
2 悲嘆過程とは、病的な心のプロセスのことである。
悲嘆過程は病的なものではなく、誰にでもある悲しみのプロセスです。
3 死別後の悲嘆からの回復には、喪失に対する心理的対処だけでなく生活の立て直しへの対処も必要である。
これが正解です。
4 ボウルビィ(Bowlby, J.)によれば、悲嘆過程には順序性はない。
間違いです。ボウルビィの提唱する悲嘆過程は4段階あり、原則的にその順序に沿って流れていきます。
5 身近な人との死別後に生じる病的悲嘆への支援では、亡くなった人への愛着をほかに向けることを目標にする。
亡くなった人への愛着をほかに向けることを目標とはしません。
第25回 問題70
Aさん(81歳、女性)は、3か月前に夫を亡くした。
「最近、夜眠れない」と訴えるようになった。
意識はしっかりしているが、ベッドで横になっていることが多くなっている。
Aさんが現在の状況になったきっかけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 せん妄
2 妄想
3 感情失禁
4 喪失体験
5 老性自覚
選択肢4が正解です。
第32回 問題59
Bさん(83歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。
終末期で、「最期はこの施設で迎えたい」という本人の希望があり、家族もそれを望んでいる。
昨日から死前喘鳴が出現し、医師から、「あと数日でしょう」と言われた。
「呼吸が苦しそうだ」と言っている家族への介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「自然な経過なので体位の工夫をして一緒に見守りましょう」
2 「Bさんに意識はないので心配いらないですよ」
3 「痰の吸引をすると楽になるので準備しますね」
4 「Bさんを励ましてください」
5 「すぐに救急車を呼びましょう」
選択肢1が正解です。
第31回 問題58
介護老人福祉施設で最期まで過ごすことを希望する利用者への対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 終末期の介護方針を伝えて、意思確認を行う。
2 入所後に意思が変わっても、入所時の意思を優先する。
3 本人の意思よりも家族の意向を優先する。
4 本人の意思確認ができないときは、医師に任せる。
5 意思確認の合意内容は、介護福祉職間で口頭で共有する。
選択肢1が正解です。
次の記事
次は、キューブラーロスの「死の受容過程」について。
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