第二次世界大戦下で、ナチス収容所の地獄を生き抜いた3人の偉人がいます。
その中の一人、ヴィクトール・E・フランクル(Frankl, V.)の功績を見ていきましょう。
3つの価値
人はなぜ生きるのでしょう。
オーストリアの精神医学者ヴィクトール・E・フランクル(Frankl, V.)は、人間の生きる意味を、下の3つの価値に見出しています。
・体験価値
・態度価値
彼がナチス強制収容所での過酷な経験から見出した「3つの価値」を見ていきましょう。
創造価値
創造価値は、行動や創作によって何かを創造することで与えられる価値です。
人は仕事をしたりモノを作り出すことで、人に価値を与えられます。
体験価値
体験価値は、体験を通して得られる価値です。
人が自然の美しさを体験したり、恋愛をしたり、人の優しさに触れて感動したり、さまざまな経験を通して得られる価値です。
態度価値
態度価値は、病気や死など避けることのできない運命に対して、どんな態度をとるかという人間の尊厳価値です。
フランクルは、ナチスの強制収容所から生還した経験があります。
彼は収容所生活で、毎日一切れのパンとスープだけの生活でも、自分より飢えている人に自分のパンを分け与える、そんな人を見てきました。
いつ死ぬかわからない極限の中で、それでも美しい夕日を見て感動する人を見てきました。
その時、彼は考えました。
人は極限状態においても、自分の運命を受け入れる「態度」を決める自由があると。
極限状態の中でも、人間の尊厳ある態度をとる人々に出会い、そこから生きる姿勢や態度そのものに価値を見出したのです。
この価値を「態度価値」といいます。
フランクルは、アウシュビッツでの体験を「夜と霧」という著書にまとめています。
この本は世界的ベストセラーになり、アメリカでは「私の人生に最も影響を与えた本」のベスト10にも入りました。
フランクル語録
「どんな時にも人生には意味がある。未来で待っている人や何かがあり、そのために今すべきことが必ずある。」
「どのような状況になろうとも、人間にはひとつだけ自由が残されている。それは、どう行動するかだ。」
ヤヌシュ・コルチャック
ナチスの収容所で、守りたかった子どもたちとともに死を選んだもう一人の偉人を紹介します。
以下の記事を参照してください。
過去問
第31回 問題2
『夜と霧』や『死と愛』の著作があるフランクル(Frankl, V.)が提唱した価値の説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 公民権運動により差別を解消すること。
2 生命が制限される状況において、いかなる態度をとるかということ。
3 最低生活水準を保障すること。
4 ライフサイクル(life cycle)を通じたノーマルな発達的経験をすること。
5 アパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃すること。
1 公民権運動により差別を解消すること。
公民権運動といえばキング牧師です。
2 生命が制限される状況において、いかなる態度をとるかということ。
これが正解です。
フランクルの提唱した3つの価値の中でも、これは「態度価値」です。
3 最低生活水準を保障すること。
これは、ウェッブ夫妻が提唱した「ナショナルミニマム」のことです。
4 ライフサイクル(life cycle)を通じたノーマルな発達的経験をすること。
これは、ニィリエが提唱した「ノーマライゼーション8つの原理」です。
5 アパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃すること。
アパルトヘイトは南アフリカ共和国の人種隔離(差別)政策で、その撤廃に関わったのはネルソン・マンデラ元大統領です。
次の記事
次は、バイステックの7原則について。
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