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【役割理論】役割期待と役割距離を押さえよ

役割理論 社会

ここでは役割期待と役割距離というちょっと難しい概念について知ってください。

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社会的役割

全ての人間は、何らかの社会的役割を持っています。

それは多くの人の場合、従事している仕事の中で、その役割を持っていますが、仕事だけではありません。

例えば、家庭では父親という役割、母親という役割、子どもという役割など。

そのような役割を周囲から期待されることを「役割期待」といい、その期待を取得することを「役割取得」といいます。

また、複数の役割を取得して葛藤することを、「役割葛藤」といいます。

ややこしいのはアーヴィング・ゴッフマンが提唱した「役割距離」の概念です。

見ていきましょう。

役割期待

人間は他者から役割を演じることを期待されています。

冒頭でも書いたように、家族から「母親」という役割を演じることを期待されたり、会社から「社長」という役割を演じることを期待されます。

これを役割期待といいます。

人は社会で生きていく中で周囲からその立場にあるべき姿やふさわしい行動が期待されるということです。

カリスマくん
カリスマくん

子どもなら「子どもらしく外で元気に遊ぶ」とか、だね。

役割取得

役割期待を受け入れそのように行動することを役割取得といいます。

ミード(Mead,G.)が打ち出した概念です。

老人が老人であるという役割期待を受け入れることで老人が出来上がります。

つまり老人は社会的に作られるのです。

子供がごっこ遊びによってお医者さんや電車の運転手などの役割を演じることは役割取得に重要です。

ミードは一般化された他者が期待する役割期待を役割取得した存在を「客我(me)」、そんな「me」に同調したり批判したりする自我を「 主我(I)」と呼んでいます。

自我については、クーリーが「鏡に映った自我」を論じています。

鏡とは他人のことで、他人は自分を映す鏡だということ、他者がどのように自分を見ているかを知って自分を知ることを説いています。

役割距離

役割期待に従って役割を演じていても、人は完全に期待通りに行動しませんよね。

ちょっと距離を置いてズレた行動をとることがあります。

カリスマくん
カリスマくん

例えば子どもなら遊びながらふざけてみたり、老人なら元気そうに振舞ってジョギングするとか、だね。

これを役割距離といいます。

つまり期待されている役割から距離をとって期待どおりに役割を演じない、これが役割距離です。

役割距離の概念を提唱したアメリカの社会学者アーヴィング・ゴッフマン(Goffman,E.)は役割距離の例として以下の2つを挙げています。

カリスマくん
カリスマくん

ゴッフマンは、人が社会的行為をするときは周囲の人を含めてドラマを演じている(ドラマツルギー)と捉えたんだ。

メリーゴーランド

メリーゴーランドに乗る子供は(年齢にもよりますが)、親の期待通りに馬に乗ることはしません。

例えばふざけたり危険な乗り方をしたり、余裕で乗りこなせることを誇示するようなふるまいをすることもあります。

このように子供は「馬に乗る」という役割期待に対して、役割距離をとります。

大人であれば子供の安全を守るためという表情をしながら乗ったりします。

大人の私たちは皮肉や冗談、ユーモアによって「本当の自分」と「役割行為」の間に距離をとることがよくありますね。

そして役割距離では、演じている本人はまったくその気がないことを表現しながら行為を行っています。

外科医の手術

「外科医が手術室で冗談を言う」という例もあります。

外科医の役割期待は「外科医らしくふるまい、手術を成功させること」ですが、その役割期待どおりではなく手術中に冗談を言うことがあります。

冗談を言うことによって緊張感を和らげたり、冗談を言えるのは余裕があるからという自分の有能さを知らしめるといった意味があります。

カリスマくん
カリスマくん

外科医の例のように、役割が厳密に定義されている状況においてこそ役割距離が有効に機能することがわかると思うよ。

自己表現としての役割距離

このように見てみると、役割距離という概念は、他者との関係のなかで発生するものであることがわかります。

外科医の手術の例では、同じ手術室にいる看護師などがいなければ冗談などは言いません。

外科医は冗談を言うことで自分の緊張を和らげ、冗談を言う余裕があるということをアピールしているわけです。

例えばメリーゴーランドに乗る子供の例では、母親の目線がなければ子供はふざけたりしません。

子供は母親に対して期待通りの役割を演じないことで「自己表現」しているわけです。

結局、役割期待に対してしっかりと役割取得をした人にとって、役割距離としての行為は自己表現なのです。

このように他者との関係の中で、ある意味「自己表現」の手段として役割距離を演じるわけですが、その距離が大きすぎて度が過ぎると「社会的逸脱」になってしまいますので注意が必要です。

役割形成

役割形成は、状況に応じて新たな役割を取り入れ、既存の役割の規定の枠を超えて、新たな人間行為が展開することです。

ターナー(Turner, R.)が提唱した概念です。

役割葛藤

役割形成によって複数の役割を担うことになりますが、そのようなときに発生する葛藤を役割葛藤といいます。

自分の中の役割同士が矛盾したり対立したりするときに起こる葛藤です。

役割距離で紹介した2事例は役割葛藤の解消として、次のようにとらえることもできます。

メリーゴーランド

「メリーゴーランドの騎手」と「ある程度の年齢の少年」という2つの役割間での葛藤があり、その解消のために騎手であることに熱中していないようふるまうという捉え方ができます。

外科医の手術

「まじめな医者」という役割と「ユーモアセンスのある人」という2つの役割間での葛藤があり、その解消のために冗談を言うという捉え方ができます。

このように役割葛藤という複数の役割を抱えたとき、その解消のために役割距離をとることがあります。

役割適応 

役割適応は、役割期待を遂行できているかどうかを分析するための概念で、他者からの役割期待に応えている状態です。

役割演技

役割演技は、心理療法の心理劇の手段として、与えられた役を即興で演じたり、演じる役を他人と交替してみたりすることで自己理解や他者理解を促す方法です。

社会生活において場面ごとに求められる役割期待を本人が適切に理解し自発的に演じることです。

まとめ

役割期待、役割取得、役割適応、役割距離、役割形成

他者からある社会的役割を期待されることを「役割期待」、その役割期待を取得することを「役割取得」、取得した役割を遂行することを「役割適応」、取得した役割から少しズレた役割を遂行することを「役割距離」、そして既存の役割の規定の枠を超えて、新たな人間行為を展開するのが「役割形成」です。

カリスマくん
カリスマくん

役割期待に対して適切に役割取得したときの役割距離は、「自己表現」の一種なんだ。

過去問

第33回 問題3 

人間関係における役割葛藤の例として、適切なものを1つ選びなさい。
1 就労継続支援B型の利用者が、生活支援員の期待に応えようとして作業態度をまねる。
2 家族介護者が、仕事と介護の両立への期待に応えられるかどうか悩む。
3 通所介護(デイサービス)の利用者が、レクリエーションを楽しんでいる利用者の役を演じる。
4 就労移行支援の利用者が、採用面接の模擬訓練中にふざけて冗談を言ってしまう。
5 高齢者が、家事を行う家族に代わり、孫の遊び相手の役割を担う。

1 就労継続支援B型の利用者が、生活支援員の期待に応えようとして作業態度をまねる。
これは役割期待です。

2 家族介護者が、仕事と介護の両立への期待に応えられるかどうか悩む。
これが正解、役割葛藤です。

3 通所介護(デイサービス)の利用者が、レクリエーションを楽しんでいる利用者の役を演じる。
これは役割演技です。

4 就労移行支援の利用者が、採用面接の模擬訓練中にふざけて冗談を言ってしまう。
これは役割距離です。

5 高齢者が、家事を行う家族に代わり、孫の遊び相手の役割を担う。
これは役割形成です。

社会福祉士 第29回 問題20

社会的役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 役割適応とは、個人が他者との相互作用を通じて自我を内面化する過程である。
2 役割期待とは、個人の行動パターンに対する他者の期待を指し、規範的な意味を持つ。
3 役割演技とは、個人が様々な場面にふさわしい役割を無意識のうちに遂行することを意味する。
4 役割葛藤とは、役割の内容が自分の主観と一致しないことによって生じる困難のことである。
5 役割距離とは、個人の内部で異なる社会的役割が対立し、両立しない状態を指す。

1 役割適応とは、個人が他者との相互作用を通じて自我を内面化する過程である。
違います。これは役割取得です。

2 役割期待とは、個人の行動パターンに対する他者の期待を指し、規範的な意味を持つ。
これが正解です。

3 役割演技とは、個人が様々な場面にふさわしい役割を無意識のうちに遂行することを意味する。
役割演技は無意識ではなく意図的に行うものです。

4 役割葛藤とは、役割の内容が自分の主観と一致しないことによって生じる困難のことである。
違います。

5 役割距離とは、個人の内部で異なる社会的役割が対立し、両立しない状態を指す。
違います。これは役割葛藤の説明です。

社会福祉士 第33回 問題19 

次のうち、ゴッフマン(Goffman,E.)が提示した、他者の期待や社会の規範から少しずらしたことを行うことを通じて、自己の存在を他者に表現する概念として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 役割取得
2 役割距離
3 役割葛藤
4 役割期待
5 役割分化

これがまさに役割距離です。
正解は選択肢2です。

次の記事

次からは心理学に入っていきます。

まずはマズローの欲求階層説から。

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