社会心理学では、個人が集団や社会からどのような影響を受けるのかを検討するものと、集団の心理について検討するものの大きく2つに分かれます。ここでは特に集団心理について見ていきます。
社会心理学
社会心理学では、集団における意思決定を扱います。集団の中で、どのように意見が形成され意思決定が行われるのか、見ていきましょう。
集団浅慮
集団浅慮は、集団で議論することによって、かえって深く考えずに決定がなされてしまうような現象のことです。
「集団の凝集性」が高いと集団内で意見を一致させようという動機付けが集団浅慮を引き起こします。
つまり集団を構成するメンバー同士が親密であると、反対意見をいう人が少なくなり熟考しなくなることです。
社会的手抜き
社会的手抜きは、単独で作業するよりも集団で作業する方が一人当たりの作業量が低下する現象のことです。

会議の参加人数が多いと誰かが発言するだろうと考えて自分は発言しないとか、思い当たるよね。
集団浅慮と似ていますが、これも集団になることによる悪い影響です。
社会的促進と社会的抑制
単純な課題では他者の存在が社会的促進をもたらし、複雑な課題では逆に社会的抑制をもたらします。
つまり集団になると、単純な作業をする場合にはみんなでワイワイと効率よく進められるのに対して、複雑な作業になると集中してやらないといけないので集団になると非効率になってしまいます。

確かに単純な農作業などは人が多いとヤル気が出て捗るけど、複雑な作業は人が多いと集中できず作業効率が落ちるよね。
コーシャスシフトとリスキーシフト
コーシャスシフトとは、集団討議などで安全志向の結論が得られやすくなることです。
リスキーシフトとはその逆で、集団討議などで極端な意見や危険志向を増大させ過激になることです。
どちらも経験的によくわかります。
同調
同調は、集団において多数派の意見や期待に合わせて個人の意見や行動が変化することです。

アッシュの同調実験を思い出してね。
内集団バイアス
内集団バイアスは、自分が所属する集団(内集団)やその集団に所属する人々を、そうでない集団(外集団)の人々よりも高く評価する心理的な傾向のことです。
集団の凝集性
集団凝集性とは、組織に所属する人を引きつける魅力のことで、集団に留まらせるための動機付けとなる心理的な力となります。
過去問
第36回 問題3
- U介護老人福祉施設では、利用者の介護計画を担当の介護福祉職が作成している。このため、利用者の個別の介護目標を、介護福祉職のチーム全員で共有することが課題になっている。
この課題を解決するための取り組みとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 管理職がチーム全体に注意喚起して、集団規範を形成する。
2 現場経験の長い介護福祉職の意見を優先して、同調行動を促す。
3 チームメンバーの懇談会を実施して、内集団バイアスを強化する。
4 チームメンバー間の集団圧力を利用して、多数派の意見に統一する。
5 担当以外のチームメンバーもカンファレンス(conference)に参加して、集団凝集性を高める。
1 管理職がチーム全体に注意喚起して、集団規範を形成する。
誤りです。集団規範は集団内のメンバーに期待する態度や行動の基準なので、これを形成しても、利用者の介護目標をメンバーで共有することにはつながりません。
2 現場経験の長い介護福祉職の意見を優先して、同調行動を促す。
誤りです。同調行動とは多数派の意見に同調することなので、利用者の介護目標をメンバーで共有することにはなりません。
3 チームメンバーの懇談会を実施して、内集団バイアスを強化する。
誤りです。内集団バイアスは自身の所属する集団が他の集団より優れていると考えるバイアスですので、強化してはいけません。
4 チームメンバー間の集団圧力を利用して、多数派の意見に統一する。
誤りです。多数派の意見に統一することは、利用者の介護目標をメンバーで共有することにはなりません。
5 担当以外のチームメンバーもカンファレンス(conference)に参加して、集団凝集性を高める。
これが正解です。集団の凝集性を高めることは、利用者の介護目標をメンバーで共有する上で重要です。
次の記事
次は、道徳性の発達理論について。
コメント